東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻

第12期修了制作展


森のかたみ 2018年/ 67分/シネマスコープ/5.1ch/カラー/DCP

12年前の事故以来、秀人は弟・雅人を避けるようになっていた。数年ぶりに故郷を訪れた秀人は、ここにいるはずのない雅人の姿を見る。「あの日のこと、覚えてる?」雅人はそう秀人に尋ねると、秀人を事故の場所へと連れて行く。――忘れている記憶と、覚えているつもりでいた記憶。秀人は12年前のことを、徐々に思い出していく。

出演:井上翔太 清水尚弥 谷口蘭 大沼百合子 宍倉暁子
監督:大杉拓真 / 脚本:中野みづほ / プロデューサー:井前裕士郎 / 撮影監督:薛白 / 照明:李子瑶 / サウンドデザイン:内田雅巳 / 音楽:大橋征人 / 美術:王慧茹 / 衣装:栗田珠似 / 編集:戴周杰



著名人コメント

ある朝、目を覚ますとすごく気分が悪い。なんだか嫌な夢を見ていたようだけど、内容は全然覚えてない。物語が進むにつれ、その時の居心地の悪さを思い出す。もうすぐ子供が生まれる男の家族の周辺では、一つのはずの世界が分裂と融合を静かに繰り返す。そしてこの映画は常にその間に立ち続ける。物事が解決して世界が一つになっても、自分と他者の身体は、居心地の悪さとともに残る。でもこの居心地の悪い身体と共に生きていくことしか私たちにはできない。バスの向こう側に消えた少年は、今、私たちの体の中に宿っている。

五十嵐耕平(映画監督)


 本来なら共存できるはずのない二つのものが、1カットの中にいっしょに映っている。一方が現実だとして、ではもう一方は? 幽霊でも幻想でもないようなのだが、ではそれはいったい何か。え!ひょっとして生き霊?…と思って警戒しながら見ていると、停留所の前で、やってきたバスの向こうを歩いている少年たちが突然消え失せた。驚いた。しかも全ての出来事は明るい陽光が照りつける中で進行する。まるで白夜のようだ。これだから大杉映画は油断がならない。

黒沢清


 一人の男が、寝転がっていた床から起き上がり、フラフラと階段を降りて、冷蔵庫に入っていた梨をほおばり、家から出てゆく。そんな日常的な家の情景が、とてつもなく異様な描写であることがやがて明らかになってゆく。自転車で通りかかった葬式に参列する少女。寄り添う二人の少年がいる。彼らは近所に住む子供達だが、同時に男と彼の兄の消し難い過去の出来事を生きている。そしてその弟自身が、実は別の場所に生きている幻影なのだが、実際には存在しないはずの弟が、過去とも現在ともつかぬ少女と手を取り合って森に入ってゆく時、私たちは現実と幻影と現在と過去の徹底した錯乱状態の中に置かれ、集団的なトランスとも言える時空に迷い込んでいる。実は全く過去のような質感ではない、カット・バックという映画の時間表現を拒否し、過去を生きられる現実として現在に招き入れようとする果敢な挑戦である。過去は、克服されたように見えるが、謝罪の契機は永遠に失われた。過去は新しい家族の幸福とともにまた生き続けるだろう。

諏訪敦彦


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メインスタッフコメント

監督:大杉拓真

「二つの時間、二つの世界を共存させよう」そう意気込んでこの作品は始まりました。脚本は難航しましたが、想像以上に奇妙な世界が出来た気がしています。記憶はとても曖昧なものだけれど、過去に思いを馳せることはある種の郷愁であると、この作品を通して感じるようになりました。この映画を観た後に、ふと何気無く忘れていたことを思い出す瞬間があれば幸いです。


脚本:中野みづほ

私は脳ミソのことを信じていません。だからこの脚本を書きました。
生きていく度に無くしていくもののお話です。


プロデューサー:井前裕士郎

三回目の大杉組で監督とうまく連携して製作出来たと思います。大杉作品から我々のチームプレーを少しでも感じ取って頂ければ嬉しいです。


撮影監督:薛白

未熟な作品なのだが、この二年は無駄にしてはないのだ。


照明:李子瑶

映画のラスト、薄暗い中で雅人がタバコを吸うシーンは今でも覚えている、すごく繊細な感情を表現した映画です。

サウンドデザイン:内田雅巳

イタズラな森さんの音を聞いてもらいたいです。


音楽:大橋征人

記憶、後悔、愛情、不安のレゾナンスと、それらの残響。
ある家族が纏うメランコリーの表象を、音楽のテクスチュアが支えられていたら幸いです。


美術:王慧茹

何をしても、今回美術の仕事はこの物語に馴染んで行くだと思います。どれが美術をやったのがわからないならむしろ嬉しいです!
映画を見て満足であれば幸いです!


衣装:栗田珠似

数年ぶりに故郷に帰り、母に会う秀人の心情が服装から見えたら嬉しいです。


編集:戴周杰

編集の断捨離は自分に対して一番大きな課題だった。「森のかたみ」の編集に関しては、「省略」はとても大事だと思った。一部のカットを棄て、観客が想像する上にキャラクターと感情を共有できると考えた。


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スケジュール・劇場案内

上映スケジュール・チケット料金


2018.3.3(SAT)-3.9(FRI) @渋谷ユーロスペース
[ 上映スケジュール ] 21:00上映開始
3月3日(土)『向こうの家』
3月4日(日)『からっぽの横』
3月5日(月)『小さな声で囁いて』
3月6日(火)『からっぽの横』
3月7日(水)『向こうの家』+『森のかたみ』
3月8日(木)『小さな声で囁いて』
3月9日(金)『森のかたみ』
*会期中舞台挨拶・トークあり
[ チケット料金 ]
前売券 1日券 \700(税込)
当日券 1日券 \900(税込)
フリーパス券 \1,500(税込) *会期中何度でも入場可能

主催:東京藝術大学大学院映像研究科


劇場案内


会場:渋谷ユーロスペース
アクセス:渋谷区円山町1-5KINOHAUS 3F          
      (渋谷・文化村前交差点左折)
会場ウェブサイト:http://www.eurospace.co.jp/
お問い合わせ:03-3461-0211




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